鞐(小鉤・こはぜ)

Kohaze(Japanese clasp)


金具がこはぜ

 一般的に編みものとして作られる靴下(ソックス)とは異なり、足袋は伸び縮みする生地作られ ておらず、単に履くだけでは脱げてしまう可能性がある。脱げないようにするためには足に固定す る必要があり、現在では一般的に“こはぜ”と呼ばれる金具を使用している。こはぜは、足袋の後 ろ側の片側(外甲の部分:写真参照)に付けられており、その反対側(内甲の部分)に付けられた掛 け糸(受け糸とも呼ばれる)に掛けて(入れて)足を固定する。漢字では小鉤、鞐などと書き、現在 ではひらがなやカタカナで表記表記されることが多いが、このページはすべて“鞐”の表記で統一し ている。
 鞐は江戸時代に開発された比較的歴史の浅いもので、古くは鞐ではなく、紐を使用して足袋 を足に固定していた。元禄期頃に財布の留め金をヒントに鞐が考案されたと言われており、まず鞐を 使用する脚絆が開発され、それを応用して鞐の足袋が開発された。江戸時代から明治頃までの鞐は金 や象牙、鯨の骨などで作られていたが、現在ではほとんどのものが真鍮やステンレスを中心とする金 属で作られている。農村部においては足袋を手作りしていた地域も多く、明治期頃までは紐足袋が多 く用いられており、広く鞐が全国に普及するのは明治中期以降である。また江戸時代には、ボタンで とめるタイプの足袋も一部で使用されていた。

こはぜと掛け糸
左の縦の線に見えるのが掛け糸です
鞐を掛け糸に掛けます

 鞐の枚数は、足首が見えない長さとなる4〜5枚のものが主流だが、古くは筒部分が短く足首の見 える2枚鞐が流行した時代もあった。その名残が現在歌舞伎の「助六」で見られる卵色の足袋である。 現在では一般的に4枚のものはカジュアル向け、5枚のものはフォーマル向けと言われるが、明確な 基準があるわけではなく、好みで選択すればよい。一方で、舞踊や祭りに使用される足袋の鞐は足に フィットするように、また着物や袴の裾から足が見えにくいように5〜7枚のものが主流である。
 地下足袋は、脚半の役割を持たせるため鞐の枚数が多く、3枚、5枚、7枚、10枚、1 2枚、15枚の鞐を使用したものがあり、その中でも5枚、10枚、12枚ものが一般的である。 中には膝までの長さがある18枚もの鞐を使用したものもある。
 鞐を掛ける部分には掛け糸が付けられており、通常は内側と外側に2本、地下足袋や祭り足袋 では、3〜4本付けられている。これは、着用する人によって足首や太ももの太さに合わせるため、 夕方は足がむくむので掛けかえるため、洗うと足袋が小さくなるためなどと言われている。どの位置 に掛けなければならないという決まりはないが、もう1本の掛け糸が見えないようできるだけ内側に 鞐を掛けた方が見栄えはよい。


鯨骨の鞐
金属とは風合いが違います

 近年では鞐の変わりにマジックテープで止めるものや、ファスナーでとめる足袋や地下足袋も あり、伸び縮みする素材で作られた足袋と靴下の折衷のような履物もあるため、実は足袋という言葉 を知っていても鞐の使い方は知らないという若者も多く、実際に祭りで地下足袋を履くのに、鞐の使 い方が誰も分からず数十分かかったという実例も見られる。ちなみに誂えで足袋を作った時には、鞐 に自分の名前を入れることがある。このように見えないところに凝ることが“江戸の粋”であると言 われる。

※ 鞐のとめ方について詳しくは“足袋の履き方”をご覧ください。
※ 紐でとめる足袋については、“紐足袋”をご覧ください。



 
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