足袋底
The sole of Tabi



足袋の底と、足袋を裏返してみたところ(下)

 足袋は靴下とは異なり、足の“甲”の部分と、“足の裏(下)”部分と分けて仕立ててあり(上の写 真参照)、足の裏(下)に来る部分のことを“足袋底(または単に底)”と言う。底の部分は甲部分 より負担がかかり破れやすい為、甲部分より厚く、また丈夫な織り方がされた生地が用いられている。 江戸時代に布製の足袋が開発されて以降、足袋底には畝刺(うねざし)、刺し子(さしこ)などさまざまな 織り方がされた生地が用いられてきたが、現在では一般的に杉綾織(すぎあや)、もしくは雲斎織(うんさい) という織り方がされた布地が用いられており、それぞれ綾底(杉綾底)、雲斎底と呼ばれている。
 杉綾織は綾織の一種で、見た目が杉の葉のような縞模様であるという事からこの名前で呼ば れており、底がW字状(見る方向によってはM字状)に見えるものである。雲斎織も綾織の一種で あるが綾織より太い糸で織られており、底には斜めの線が入っているように見える。

杉綾底
雲斎底
杉綾織の足袋底
W、M字模様が入っているようにみえます
雲斎織の足袋底
斜めに線が入っているようにみえます

 杉綾底の足袋は西日本で、雲斎底の足袋は東日本で作られるというが、実際に管理人の印象では、 関西や東海方面の業者が製造した足袋は杉綾底が多く、東京の老舗の足袋は例外なく雲斎底であった。 ただし、江戸時代は雲斎底の方が一般的であったと言われており、また老舗の足袋店では西日本でも 雲斎底を採用している店が多い。ただし足袋の最大手、福助足袋は関西が地盤でありほとんどの足袋に 杉綾織を採用しているため、現在では杉綾織の方が一般的によく知られていると考えられる。 また同じように雲斎底、杉底を採用していても、東日本のものは一度洗濯をすると糊付けが落ちた甲部分と 同じように柔らかくなるのに対し、西日本の足袋の底には芯が入れられており、何度洗濯しても堅く、 底の形を留めているものが多い。これについては、着物には粋を求め、新品や糊の利いたものを好む江戸の 職人や武家気質と、合理的なものを好む上方商人気質の違いではないかと推測される。一方で、 足袋の需要は縮小の一途をたどっているため、足袋会社や工場の統廃合が進み、足袋における地域的な 差異も縮小しているため、杉底、綾織底の地域的な差異も今後は縮小していくものと考えられる。

石底
丈夫な石底
ボコボコしていていかにも丈夫です
別珍のコーデュロイが用いられた底
縦に畝が入っているのが分かりますね

 また、足袋を恒常的に使用する職人や料理人の方向けの、石底という織り方を用いて、さら に底を丈夫にした足袋や(石底足袋参照)、底を刺し子にした足袋 も販売されている。石底や刺し子底は、日常生活に足袋が用いられ、家庭においても手製で足袋が 作られていた頃は一般的であったが、機械化が進み足袋を店で購入する時代になると、この二種類は 見栄えが悪いという理由で衰退し、杉綾底や雲斎底の足袋が普及した。しかし杉綾底や雲斎底の 足袋より丈夫で長持ちするために、作業用や祭り用の足袋には今でも石底や刺し子底が用いられてい る。
 その他戦後までは冬場に用いる足袋として一般的なものであり、現在でも細々と使用されて いる別珍足袋は、底にもコーデュロイと呼ばれる、別珍生地に畝を持たせたものが使用されており、 見た目からも非常に暖かくみえる。

革足袋の底。甲部分と同じ生地です
(取材:清洲城信長人形)
伝統的な仕立て方がされた襪(模造品)
写真下部分が足の裏に来ますが…

 特殊なものとして、革足袋は甲部分の生地をそのまま底にも使用する。革足袋の場合、甲 部分と同じ生地を使用しても、革であるため非常に頑丈である。一方柄足袋においても、革足袋の 模倣やデザインの関係で甲部分の生地をそのまま底に用いるものがあるが、耐久性に難がある。 公家の装束などで用いられている襪(しとうず)は、現在では足袋と同じく底のある仕立て方が されており、底には綾底や杉底が用いられているが、江戸時代以前は甲の生地を2枚にあわせた 、足袋とは全く異なる仕立て方がされていた(写真参照)。この場合は、弱い甲部分の生地が負担の 掛かる足の底に来るうえに、底が分けられていないため足の形に合わず磨耗が激しかったと 考えられるが、もともと襪を使用するのは一部の特権的な公家階級で、さらに儀式にのみ用いられる ものであったため、襪を履いて歩くことは少なく、強度はそれほど必要なかったのであろう。
 通常足袋底は、甲部分がどんな色でも白色である。これには正座をした時に裏が白だと 礼装用の白足袋に見えるからといった説があるが、詳しい事は判明していない。紺足袋や黒足袋に 黒色の底が用いられたものは、特に烏足袋と呼ばれており、裏が目立たないために伝統芸能の際に 使用されている(烏足袋参照)。また近年発売されている色足袋や 柄足袋は、白の底だと汚れが目立ちやすいためか、底が黒色のものもある。そのほか着物ブームに のって色足袋や柄足袋も多く販売されているが、底が白や黒といった伝統にとらわれずに、 甲部分のデザインに合わせた色や、甲部分と同じデザインになっているものも多く販売されるようになった。



     
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