百貨店に入っているような呉服屋で、白足袋の次に多く販売されていると思われるのが、紺足袋
と今回取り上げる黒足袋である。黒足袋は主に男性向けであり、甲部分には黒色に染められた布が
用いられているが、底や裏地は通常白色である。表地には光沢のある綿繻子(朱子)地が用いられた
ものが多いが、光沢のない黒生地を使用したもの、化繊を使用したもの(伸びる足袋など)もある。
黒足袋は礼装用にも用いられる白足袋に対し、紺足袋とともに男性の普段使いに用いられる
。地域によっては葬儀に黒足袋を用いるという風習があるが、本来は黒足袋は普段使いであり、弔
事に黒を用いるのは明治期以降に西洋から輸入された文化であると言われている。
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光沢のある黒繻子生地 |
フラッシュの光で光っています |
関東でよく用いられる紺足袋に対し、黒繻子足袋は関西でよく履かれるといわれるが、実態は不明
である。しかしながら少なくとも西日本在住の筆者が見る限り、正月などに着物を着ている男性は大
抵白足袋か黒足袋を用いており、紺足袋を用いている男性はまず見かけない。これは、紺足袋は色落
ちが激しく度々取り替えないといけないため、粋を大切にする関東では紺足袋を多く履き、関西では
商売人が多いため、外では客の前の礼儀として白足袋を、普段履きには洗っても色落ちしない黒繻子
足袋を用いていたためとも言われている。ただし、足袋を恒常的に用いる男性はもはやほとんど存在
しないために、足袋会社や工場の統廃合が進み、ネット通販などを通じ足袋会社の販路も全国に広が
っていることから、紺足袋と黒足袋の選択という地域的な差異は、今後見られなくなっていくものと
考えられる。
ちなみに江戸期以降、底が白色である理由は、正座をした時にまるで白足袋を履いているよう
に見えるため、黒足袋を用いるのが場違いであったときなどに礼儀を尽くすことができるからという
説がある。
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