普段着として着物が用いられることはほとんどなくなった現代であるが、それでも足袋が大活躍
するのは、祭りの時である。伝統的な祭りにはもちろん、YOSAKOIソーラン祭りや学園祭の
ような新しい祭りにも、足袋や地下足袋が多く用いられている。日本の祭りには足袋が不可欠であ
ると言うと言いすぎであろうか?
祭りには黒足袋や地下足袋をはじめ様々な足袋が使用されており、中には田楽(でんがく) や地歌舞伎のように、水色や黄色などの派手な色の足袋が用いられる祭りもあるが、一番多く用い られているのはやはり白足袋である。裃(かみしも)や装束などの着物を着た人に用いられるのは もちろんとして、下帯一つで行われる裸祭りにも白足袋は着用されている。これは、下帯一つと言 ってもそれは祭りのための神聖な“ハレ”の衣装であり、同様に白足袋は紺足袋や黒足袋と違い “ハレ”の衣装としてとらえられているため着用されるのではないかと考えられる。同じように “神域に入るのに裸足ではいけない”という考えがあるのかもしれない。 一方で、紺足袋、黒足袋や地下足袋も多く用いられるが、これは祭りの発祥が、気の充実を 図る庶民中心であるか、もしくは神聖さを重視する寺社中心であるかにより、または地域的な差異 により、どちらを用いるか選択されるものと考えられる。
また祭りには地下足袋が使用されることも多い。そのため祭り用品専門店では地下足袋のこ とを指して“祭足袋”と呼ぶこともある。祭りには、力王や丸五など大手メーカーが製造した 作業用地下足袋も多く用いられているが、祭りのために特化し開発された、底にクッションや空気 が入った地下足袋も発売されている。これはかつて、激しく体を動かす祭りによって腰を痛める人 が続出したため、腰や足への負担を小さくするよう開発されたもので、だんじり祭や阿波踊りの ような激しい動きを伴う祭りに使用されることが多い。また、地下足袋ではなく普通の足袋の底に クッションが入れられたものもあり、祭りの他にも、日本舞踊にも使用されているようである。 太鼓を叩く際にも、地下足袋や足袋が多く用いられている。どのような足袋を用いるかはそ の団体によって決められているところが多いようで、一般的に男女の別にかかわらず紺や白の地下 足袋や足袋が用いられることが多い。太鼓の場合、足を大きく動かす場面が少なく脚半の役割を必 要としないためか、3枚鞐や5枚鞐など筒めで、また底が薄いものが用いられる事が多い。 底の薄い地下足袋は耐久性がないが比較的安価なため、地域のみこし担ぎなどに用いられている ことがある。 また近年ブームとなっているよさこいには、着物風の衣装と合わせて地下足袋が用いられて いる。足袋の動きやすさや見栄えに加え、靴から履き替えた時の違和感が小さいためか、 「ジョグ足袋」と呼ばれるタイプの 地下足袋が用いられていることが多い。
作業用の地下足袋は黒や紺、白色で、鞐の枚数(筒の長さ)も10〜12枚と、脚絆の役割を持た せた長いものが主流であるが、祭り用の地下足袋は、その祭りの目的に合わせるために豊富な色や種 類が用意されており、例えば水色、紫色、赤といったものもある。鞐の枚数も、3枚〜15枚と豊富 に用意され、なかには18枚も鞐があり、着用するとひざのあたりまで覆うものもある。祭り向けに 製造された地下足袋は作業用のものとは異なり、耐久性より履きやすさやクッション性、動きやすさ を重視しているものが多い。 また常装に用いない特殊な足袋として“わらじ(草鞋)掛け足袋”がある。この足袋は、草鞋 履く際の下ばきとして用いられるものであり、かかとや足の指先の部分があて布により強化されている (わらじ掛け足袋参照)。鞐の枚数は5枚〜7枚、色は紺や藍染めが多いが、 黒や白のものもある。ちなみにわらじ掛け足袋は、東日本の祭りで見かけることが多いが、 西日本ではだんじり祭りや祇園祭、博多祇園山笠に代表されるように地下足袋が用いられることが多く、 わらじ掛け足袋を用いる祭はまず見かけない。管理人が調査した限りではその境界線は“浜松祭り” で有名な浜松であり、浜松祭りでは地下足袋を用いる人が多いが、一部でわらじ掛けを使用する方も いるようである。
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