柄足袋

Tabi with some patterns

柄足袋
古典的なトンボ柄や花小紋の柄足袋

 足袋には白足袋や黒足袋のような無地の物だけでなく、表地に柄の入った“柄足袋”と呼ばれる 足袋も存在している。一昔前までは、女性物であっても柄足袋はほとんどみかけなかったが、イン ターネットを通じて全国から受注が出来るようになった為か、2000年頃から柄足袋を扱うイン ターネット上の店が密かに増加していた。そして2005年頃からは、アンティーク着物ブーム、 浴衣ブームの影響で柄足袋が増加し、素材やデザイン等を選ばなければ、呉服店、呉服リサイクル 店、雑貨屋等で普通に販売されるようになった。柄は一昔前までは古典的な和柄である花小紋や縞 柄のものが一般的であったが、染色技術が発達し、またファッション観も多様化したため、古典柄 だけでなく、大きな花の絵を大胆にあしらったものや、ウサギなどのキャラクターを描いたもの、 クリスマスなど行事をあしらったものなどいろいろな柄の足袋が販売されるようになった。底色も 白だけでなく、黒や表地と同色系統のもの、また柄付など多彩になっている。最近ではアンティー ク着物を着て柄足袋を履いた女性を、街で普通に見かけるようになった。以前より足袋が普及して いる珍しい例である。
 一方で男性の場合は和装であっても柄足袋を用いる事は少なく、街中で柄足袋を履いた男性 はほとんど見かけないが、それでも縞や小紋など、古典柄を描いた男性向け柄足袋が足袋専門店を 中心に売られている。柄足袋を履いている男性は相当の着物通と見てよいだろう。ただし歌舞伎や 時代劇など芸能関係、そして祭りには、男性であっても比較的多く柄足袋が用いられている。

花小紋柄の柄足袋
花小紋模様の足袋
遠目で見ると黒色の足袋にみえます。これぞ…粋?
花小紋、巴紋をあしらった鮮やかな足袋

 柄足袋は、江戸時代初期頃まで多く用いられていた革足袋に、劣化や 虫食いを防止することを目的として柄をつけて燻(いぶ)した革が使用されていたのを発祥とする。 当時は常装として足袋が用いられていたのではなく、主に武装用の履物として甲冑と共に蜻蛉 (とんぼ)柄や小紋柄などの“柄の入った革足袋”が使用されていた。その後革足袋が衰退し、 布足袋が主流になっていくと共に柄足袋はあまり用いられなくなり、主に演劇や舞踊用としてのみ 用いられるようになった。その傾向は明治後期まで続くが、大正期頃になると、現在のアンティーク 着物の原点である大胆な柄の着物が流行し、それに伴って江戸時代までの柄足袋とは異なる、洋風 デザインや明るい柄の柄足袋が多く用いられるようになった。その後戦火の広がりと共に柄足袋は 姿を消していくが、現在の柄足袋ブームの原点は大正期にあるといえる。

クリスマス柄の柄足袋
武装用の革足袋
どうみても柄足袋です
クリスマス柄の柄足袋
若者を取り込むにはいい方法でしょうか
狂言足袋も一種の柄足袋
詳しくは芸能の足袋にて
武将の足元に用いられるような足袋
革足袋を模した布製柄足袋です

 素材は大正期には綿を用い柄を染めたものが一般的であったが、現在では染色の容易さと価 格を低く抑えるためか、化繊素材を使用したものが増加している。また最近では親指を分けた和柄 の靴下(ソックス)の事を指して“柄足袋”と呼ばれていることも多く、“本物の足袋”を知らな い若者が増加することが危惧される。
 柄足袋は、礼装用に使用する白足袋や常装に使用する紺足袋、黒足袋とは異なり、もともと 武装、舞踊やおしゃれ用として用いられてきたものであるため、例え若者の間で“しゃれてるし!” と思っても、常識的に礼装には用いないほうがよい。また足袋は靴下とは異なり着物姿全体に大き な影響を与えるために、おしゃれとして柄足袋を用いる場合であっても、上手に着物に合わせないと “舞台から抜け出してきたんですか?”という状態になってしまうことや、足元だけ異常に浮いた 感じになりかねないので、よく考えて合わせた方がよい。
 ちなみに狂言では狂言専用の足袋を用いることになっている。この足袋は一見黄色一色に見え るが、実は薄黄色に薄茶色の縞の入った縞足袋であり、柄足袋の一種であるといえる。これは能を演 じる時には白一色に染められた革足袋を用いていたのに対し、狂言を演じる時は色を染めていない、 もしくは革を燻しただけの革足袋を履いていた名残と言われている。また、歌舞伎では武装した武将 が履く緑色小紋の足袋の事を指して“かわたび”と呼ぶこともあるが、これは革足袋を模した布製の 柄足袋のことである。


      


<取材協力:浅草めうがや様・文楽足袋様>
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送